奈良市で行われた臨床研修研究会(2016)に出席してきました。
午後のシンポジウムのテーマは“ “新専門医制度前夜”でした。
制度運用開始前の混乱がしっかりと聴衆に伝わってきました。
シンポジストの発表および参加者の質問から私なりに理解した問題点をまとめてみます。
詳しく知りたい方は、 社)日本専門医機構HPをご覧ください!
理念および運用
現在の専門医制度は各学会が認定、新専門医制度は中立的な第3者機関が認定
制度の運用は、初期臨床研修と異なり“厚生労働省”ではなく第3者機関である“社)日本専門医機構”(法に基づかない、医師の自律的autonomyなもの!)
新専門医制度の受益者は、“国民”と“専攻医(専門医取得を目指す医師)”
プログラムを登録し、認定されたプログラムに沿って病院群で専攻医を育成
基本領域専門医の性質が混在しているなぁ!
基本領域専門医として内科、外科など基盤となる診療科と脳神経外科、泌尿器科、眼科などのサブスペシャリティー的な診療科が併存
さらに高齢化に伴い多様な臓器や疾患を超えた、多様な問題を抱える患者に、対応すべく“総合診療科”が基本領域専門医として加わりました。
⇒ここは“内科”専門医とのオーバーラップ(内科は“ダブルボード”を希望とのこと)!
本年2月、日本医師会や日本病院連合会から新専門医制度の導入により大病院に専攻医が集中(大学病院、医局制度の復権)し、結果的に地域医療の崩壊させるのではと、疑義が出され、専門医機構も対応を迫られているそうです。
⇒社)日本専門医機構は地域の状況を考慮したプログラムの二次審査、実際の募集開始から応募状況を公開することで地域分布、診療科の分布について調整的な役割を果たそうと努力中らしい!
続いてフロアからの質問からピックアップします。
Q、各学会の設定した定員は現状からの差が大きい!
外科の専門医が平成27年の試験で952人合格している(外科学会HPより)が、今回の外科専門医の定員はプログラム申請ベースで2100程度、指導医数や症例数(NCD登録から)から調整して1900程度が提示され、現行制度の専門医合格数の2倍の定員が設定されている?
A. 地域ごとの格差(西高東低)がもともとある + 他の外科系領域との競合も予想される!
つまり定員の枠がぎりぎりでは、他の外科系診療科への専攻医の流出が懸念!
それぞれの学会の担当者の方のご苦労がしのばれますねぇ。
またフロアから日本専門医機構はそもそも必要ですか?
という過激な質問も飛び出し聞いていてびっくりしました。
がんばれ!日本専門医機構!
実際の認定作業を担当する各学会の利害対立を、大局的見地からコントロールしてもらいたいものです(米国ACGMEのような強力なリーダーシップを期待します)。
是非、地域医療を守ってくださいね!
一般社団法人日本専門医機構のHP
本年4月18日付けで専攻医向け新専門医制度の研修プログラム応募手順
(http://www.japan-senmon-i.jp/program/application_flow.html)
が発表されています。
現在2年目の研修医の先生方は応募期間が迫っています。
しっかりと手順を確認しましょう。