冷蔵庫を過信するな! その(3)

夕方、地下鉄駅のホーム、柱の陰

 

おやっ、MOくんがおるやないか!

看護学生のMOくんからブログの感想を伺う絶好機が到来!

 

MOくん ”ああ先生、こんにちわ!ぼくの話、ブログに載ったらしいですね?

私 ”えぇー、まだ見てくれてないの?

MOくん ”ど、どう、見たらいいんですか?” (・・;)

私 ”なんや知らんのかいな? スマホ、持ってる?

 ここは ”せいしんじたつ”ってなんじゃ? のブログ内容から想像してね!

 

さっとブログに目を通したMOくんとの会話を要約すると

MOくん ”ちょっと、話ふくらませすぎてません?

私 ”そうかなぁ (^_^;)  

あまり、盛ってないけどなぁ 

まあMOくんの心情が伝わっていいんとちゃう?”

ちなみに ”冷蔵庫を過信するな! その(2)”の赤字の部分は私の補足です!

MOくん ”こうやって読んでみると、ちょっと、恥ずかしいですね

私 ”またいい話あったら頼むね!

 

MOくんは途中の駅でさっそうと降りてゆきました

 

 さて、もうひとつの“冷蔵”に耐える細菌!

腸炎エルシニア”

本名、エルシニア・エンテロコリティカ!

 

動物の肉、内臓などに付着し、食中毒の原因になります(*1)。

 

もつ鍋! おいしいねぇ!

でも十分に加熱しないで、がっついて食べないでね!

国立感染症研究所感染症情報センターIDSC”HP からエルシニア腸炎の特徴を!

右下腹部痛と嘔気・嘔吐から虫垂炎症状を呈する割合が高く、 虫垂炎、終末回腸炎、腸間膜リンパ節炎などと診断される場合もある。腸管感染であるにもかかわらず、頭痛、咳、咽頭痛などの感冒様症状を伴う割合が比較的高く、また、発疹、紅斑、莓舌などの症状を示すこともある。

http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_04/k03_04.html

 

 冷蔵庫内の保管も過信は禁物だよ!

 

実は”腸炎エルシニア”は日本の輸血事情に大きな影響を与えました

 

みなさん、献血に行かれたことはありますか?

時期によって血液製剤が不足するため、駅などで献血のPR、呼びかけをしているシーンにしばしば遭遇します。

現在400ml採血が主流です。

血球成分を遠心分離して得た赤血球濃厚液(RCC)には保存液を加えて冷蔵保存(*2)

 

 でも時間がたつと赤血球の寿命がやってきます

カリウムなどが上昇して危険!

期限までに使用しない血液製剤は廃棄されちゃいます

 

 使用期限の延長ができればなぁ!

 そこで日本赤十字社は1992年に新しい保存液の製造承認をゲット !

M・A・P液と呼ばれる保存液です

溶血の防止のための M:マニトール 

赤血球のエネルギー(ATP)維持のためのA:アデニン と P:リン酸を含有!

 

1995年ごろ医療現場で濃厚赤血球液(RCC)は”マップ(MAP)"と呼称!

保存期間が21日から42日へと伸びたことで、血液製剤の有効利用の期待が高まりました!

理論上は42日もつはずでした!

 

その前にたちふさがった“くせもの” 

5℃前後で冷蔵保存している血液中で密かに増殖する奴!

恐るべし、腸炎エルシニア ^_^;

 

MAP液の開発で、長期保存が可能になりましたがエルシニアが増殖するリスクも増加!

 冷蔵保存中も増殖し”エンドトキシン”という毒素を産生!

汚染された血液製剤を使用すると、命を救うための輸血でショックを起こして死亡する可能性が (`・ー・´)!

 

腸炎エルシニア”により方針撤回を余儀なくされました!

 1995年4月1日からRCC-MAP血の保存期間は21日へと短縮されました(*3)。

 かくして血液製剤の保管期限延長で有効利用を図ろうとする試みは挫折!

 最後に

1か月以内に発熱や下痢を起こした人はひょっとしたら病原微生物が血液内に潜んでいるかもしれません。

献血される際にはご注意を!

 

冷蔵庫を過信しないで、食品も、血液製剤も早めに活用しましょうね (^▽^)/

 

*1横浜市衛生研究所HPに詳しく紹介されています

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/yersinia1.html

*2日赤HP 「輸血に関するQ&A」から引用 :赤血球製剤の保管は2~6℃で、保存庫の条件としては自記温度記録計付き及び警報装置付きの輸血用血液専用保冷庫を使用する 

http://www.jrc.or.jp/mr/relate/qa/

*3 厚生労働省のHP「血液製剤の使用指針」(改定版)から引用

日本赤十字社では,MAP加赤血球濃厚液「日赤」の製造承認取得時には有効期間を42日としていたが,エルシニア菌混入の可能性があるため,現在は有効期間を21日間としている。

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/5tekisei3b03.html